完璧な仕事をした人

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「この世の中に完璧なんて存在しないよ」などとよく聞きます。
『完璧』とは欠点がまったくないこと。
素晴らしく立派に見えていても、
探せばやっぱりどこかに残念なところはあるものです。
残念ながら私は「完璧な○○」というものを見たことがありません。
しかし完璧な仕事をしたと言える人を、一人だけ知っています。
その人の名は
『藺相如』

春秋戦国時代の末期の人で趙の家臣でした。
あるとき趙の王様のもとに大国・秦から使者がやってきました。
趙の秘宝「和氏の璧」と、秦の十五か所のお城を交換しようというのです。
趙からすればなかなか良い条件です。
しかし簡単に応じるわけにはいきません。
「はい、交換します」と答えれば、まるで趙は秦の属国。次はどんな無理を言ってくるかわかりません。
他の国にも馬鹿にされます。
そもそも約束通りにお城を渡してくれるかどうかもあやしいところ。
だからと言って「嫌です」と答えてしまうと、「こんなに良い条件を断って秦王に恥をかかせた」ということで
戦争を仕掛けてくるかもしれません。
趙の王様は困り果ててしまいます。たくさんいる家臣もあまりの危険に交渉役になろうとしません。
そこで登場するのが藺相如です。
彼は璧を持って秦の都へ向かいます。そして璧を秦の王様に渡します。
しかし受け取った王様は璧を周りの家来や妃に見せびらかすばかりで、城の話などまったくしません。
「やはり約束を守るつもりなどなかったのだ・・・」
そう判断した藺相如は
(中略)
藺相如は無事趙へ帰還しました。
璧を完う(まっとう)して趙に帰ったわけです。(完璧帰趙)
大国・秦を相手にして一歩も退かずに、璧を守り通し戦争を避け趙の面目を保った藺相如の働きは
まさに《完璧》といえます。
いやあ立派な人ですね。
藺相如はどうやって璧を取り戻したのか。
(中略)が気になる方は、ぜひ司馬遷『史記』を読んでみてください。

長い?漢文?難しそう?
大丈夫。漫画があります。
三国志でも有名な漫画家・横山光輝の『史記』が小学館から文庫で出てます。

藺相如の完璧の故事は文庫版第3巻。
他にも「刎頚の友」の由来もこの人。
秋の夜長にぴったり。
読み終えたころには、つい人に話したくなる蘊蓄もふえてます。ぜひ。